今日はこの話題です。
10月23日、河野外相は閣議後記者会見で約40年間続けてきた中国への政府開発援助(ODA)について「中国の経済レベルを考えれば、恐らく必要はないと思う。新規の案件採択は終了する」と、今年度の新規案件で終了する方針を述べました。
日本の対中ODAは1979年から始まり、総額3兆6500億円余りが投じられ、ピークの2000年度は円借款だけで2144億円を拠出しました。その後中国が経済大国として成長するにつれて、日本国内では対中ODAの見直し論が噴出し、ODAの大部分を占めていた円借款の新規供与は2007年に終了していました。その後10年も続けていたとは、遅すぎるとさえ思ってしまいます。
ODAの終了については、25日から訪中する安倍総理が中国の李克強首相との会談で提案する見通しだそうですけれども、中国共産党政府は政府系メディアに対し、中国の経済発展に対する日本の政府開発援助(ODA)の貢献を積極的に報じるよう命じたようです。この辺りは強かなものです。
このODAの終了で、日本は中国から一歩引くことになるかと思いきや、別口で中国に手を差し伸べようとしています。日中スワップ協定再開です。
日中両政府は、今月26日に北京で開かれる日中首脳会談で、円と元の「通貨スワップ協定」の再開で合意する方針を固めたと報じられています。融通額は3兆円規模に上る見通しのようです。
これまで、日中間のスワップについては、2002年に3000億円規模のスワップ協定を結んでいたのですけれども、尖閣諸島を巡る緊張の高まりを受け、2013年に失効していました。
尖閣を巡る緊張が全く解けていないにも関わらず、今回いきなりそれを再開するばかりか、スワップ規模を10倍に拡大するなど尋常ではありません。
マスコミは、中国に進出している日系企業が、人民元の決済ができなくなった場合でも、中国人民銀行から日本銀行を通じて人民元の供給を受けられるようになるとして、民間企業の「セーフティーネット」を構築する狙いがあると報じていますけれども、まるで、近いうちに人民元決済が出来なくなるかもしれないことを予期しているかのような書き振りです。
日中3兆円スワップの狙いはなんであるのか。
こちらのブログでは、三菱東京UFJ銀行とみずほ銀行が「パンダ債」を発行していることに着目し、中国本土で何らかの金融ショックがあり、人民元を調達することができなくなった場合に、三菱東京UFJ銀行とみずほ銀行が債務不履行に陥ることを防ぐために行うのではないかと述べています。
パンダ債とは中国以外の政府・企業などが、香港以外の中国本土で人民元建てで発行する債券のことで要するに「外貨建て外債
」のことです。
中国に進出している日本企業が元を入手するために、日本から中国に円を送って元に替える方法も勿論あります。けれども、この方法は中国の資本規制の影響を受けやすく、柔軟性に掛ける嫌いがあります。それに引き替え、パンダ債は、日本の親会社が高い信用力を背景に現地で人民元を調達する有力な手段となります。
要するに日本企業にとって中国事業の拡大に追い風となる債権ということです。
三菱東京UFJ銀行とみずほ銀行は今年1月にこのパンダ債を発行しています。発行額は三菱東京UFJ銀行が発行登録30億元で10億元分発行、みずほ銀行は5億元分を発行と合わせて15億元。日本円換算で300億程度です。
けれども、パンダ債を発行し始めた今年1月と今では状況は一変しました。今は、米中貿易戦争から米中新冷戦に突入したとも言われるフェーズです。そのタイミングで日本企業の中国事業拡大など、自殺行為に成りかねません。寧ろ、今は拡大より撤退を急ぐ時期だと思います。
ただ、そうはいっても今日明日に逃げ出せる訳もありませんから、多少の時間稼ぎは要る。ゆえに其の為の日中通貨スワップというのは有り得る話だと思いますね。
3兆円のスワップが効いているうちに、中国に進出している邦人企業は中国発恐慌に備えるべきだと思いますね。
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