更に続きです。



11月3日、河野外務大臣は神奈川県で行った街頭演説で"いわゆる"徴用工訴訟問題について取り上げ「1965年の国交正常化でいちばん問題になったのが補償や賠償をどうするかで、日本が経済協力として一括して韓国政府に支払い、国民一人一人の補償は韓国政府が責任を持つと取り決めた……判決はこの取り決めに完全に違反するもので日本としては受け入れられない。韓国にすべて必要なお金を出したので、韓国政府が責任を持って補償を行うべきだ」と、個別の補償は韓国政府が責任を持って行うべきだと強調しました。

実に正論であると同時に、この問題の早期収拾には100%韓国政府が責任を持って国内問題として解決するしかないと示したといえます。

今回の判決に対する日本の対応は政財界共に統一されつつあります。

11月1日、経済同友会の小林喜光代表幹事は記者会見で、筋が通らないことには一円も払ってはならない。他にも迷惑をかける……今のままでは日韓関係、特に経済で負の効果を間違いなくもたらすと思う……韓国は分かりづらいということではないか」と批判。 また、岐阜市でも5日から予定していた韓国大邱市寿城区代表団の岐阜市来訪を延期したと発表しました。

特に今回の判決は財界をも巻き込んだことが大きい。

東京商工リサーチによると、韓国には日本企業393社が進出。計715拠点があり、内、製造業は253拠点あります。今回の判決は日本企業にとって韓国との関わることが経営リスクになることを示したものであり、投資云々ではなくなりました。

第一生命経済研究所主席エコノミストの西濱徹氏は「訴訟がドミノ倒し式に広がっていくのかどうかが問題だ。資産の差し押さえという話も浮上しており、韓国に生産拠点を置いている日本企業も事業を縮小したり、新規投資を手控えたりする動きが出てくる可能性もある」と指摘していますけれども、韓国政府の対応によっては、当然その動きも出てくるでしょう。

当然、TPPや通貨スワップを含むすべての外交交渉はストップになるでしょう。それこそ日本は対北朝鮮以外は一切相手にしない"ツートラック"戦略を取ることになると思いますね。

11月1日、朝日は、井田貢元駐韓日本大使にインタビューし、「司法府の判断に照らして過去の合意をひっくり返しても大丈夫だと言う韓国の民族主義的思いが今回の強制徴用判決の最も大きな要素」との大使のコメントを掲載しています。朝日がこんな記事を載せるとは、匙を投げた感すらあります。

今回の判決については海外メディアでもポツポツ取りあげられているようですけれども、日本政府が海外広報を速やかに始めた成果が早くも出ているのかもしれません。

ただ、当の韓国は自分達がどれだけの事をやらかしたのかという自覚にまだ欠けているのではないかという感があります。

朝日新聞は、自社のソウル支局に勤務する韓国人職員4人が今回の問題について話し合った記事を掲載していますけれども、そこで「韓国人は昔の取り決めを、現在の物差しでひっくり返す」という批判について、「過去の約束が『お話にならない』と思うから、ひっくり返すのではないか」と答えています。

契約というものを全く分かっていない発言としか言い様がありません。たとえ、相手が日本だから"過去の合意をひっくり返しても大丈夫だと言う韓国の民族主義的思い"がなせる業だったとしても、あまりにも近視眼的であり、それが自分達にどう跳ね返ってくるか見えてなさすぎるように思いますね。

麗澤大の西岡力客員教授は「日本人は100のことを言いたい場合は50のことを言う。相手が50のことを話したら『本当は100、言いたいのだな』と忖度するわけです。でも、韓国人は逆なのです。韓国人は、100のことを伝えたいときに200を言います。相手が200を言ったらそれを100と受け止める」と述べています。

確かに先の朝日新聞ソウル支局に勤務する韓国人職員の対話を見ても、「韓日経済関係はそれほど悪化しないと思う」だとか「お互いが、一歩ずつ譲り合えば良い結果が生まれるのではないか」とか、自分勝手というか、呑気というか、ズレた見解を述べているように見えます。

今回の判決は、更に普通の日本人の多くを"嫌韓"の向こうに追いやりました。

奥薗秀樹静岡県立大教授は韓国・中央日報のインタビューに「私たちの大学でも、高校時代からK-POPに関心を持ち、韓国について勉強したいという学生の比率が高いが、若い人たちも『しばらく韓国はもういい』と話している。『韓国の考え方にはついていけない。これ以上見ていると韓国が嫌になりそうで、そうなるのも嫌で、しばらくは距離を置いておく』ということだ。とても韓国に興味を持っていた学生だった。ショックだった。予想以上にダメージが長く続く可能性があり、深刻だと感じている」と述べています。

奥薗教授は、今回の判決について「両国が外交交渉をして解決する問題ではなくなった。両国ともに国内の世論がある」と指摘し、「今回の最高裁判決では、外交的保護権が(請求権交渉で)放棄されたかがあいまいになっていた。個人的には最高裁が文在寅政権が解決する余地を残したのではないかと考える。なら文在寅政権が『外交的保護権はその時に放棄されたのでどうすることもできない』として当事者を救済できる方法を考えてみるべきではないかと思う」と落としどころを提示しています。

けれどもこれは、冒頭に取り上げた河野外相の「個別の補償は韓国政府が責任を持って行うべきだ」という主張と軌を一にします。やはりこれが一番解決策に近いのではないかと思いますね。

ただ、其の為には、日本の怒りが正しく韓国に伝わる必要があります。200を行っても100と受け取る相手に、50を言って100を忖度してくれる筈もありません。今回の件で日本は200いやそれ以上を韓国に伝えるべきだと思います。

徳島文理大の八幡和郎教授は自身のフェイスブックで「日本は何もしないと思われるから韓国は無茶をする」とし、次の5つの報復措置を提案しています。
(1)日本人が(朝鮮)半島に残した個人財産への補償を要求
(2)対北朝鮮経済協力の拒否(統一時も含む)
(3)3代目以降に特別永住者の地位を認めない事
(4)歴史教科書における(近隣国への配慮を定めた)近隣国条項を韓国に限って撤回
(5)韓国大衆文化の流入制限
八幡教授は「これらは日本が単独でできる」とし、「日本はここまでやれると見せないと、韓国とは話し合いにならない。紳士的に対応していたら、韓国政府も国民を説得できない」と指摘しています。

果たして、これらの報復が"200"に相当するのかどうか分かりませんけれども、これまで日本は50はおろか10も言ってこなかったですからね。舐められていたのも無理からぬことです。

今回の件は、そういったこれまでの"悪癖"と決別するよい機会になるかもしれませんね。
 

コメント

 コメント一覧 (4)

    • 1. opera
    • 2018年11月04日 17:02
    • >奥薗教授は、今回の判決について…判決では、外交的保護権が(請求権交渉で)放棄されたかがあいまいになっていた。
       ???
       国際政治学者らしいのですが、日韓基本条約の破棄を前提としない限り、外交的保護権は問題にならないのでは?
       つまり、日本側の立場では、この点を明確化する意味が無いのでは?
      >徳島文理大の八幡和郎教授は…5つの報復措置を提案して…
       いるとされますが、
      >(1)日本人が(朝鮮)半島に残した個人財産への補償を要求
       韓国側への対抗ということでしょうが、これも日韓基本条約の破棄を前提とした主張なのでは?
      >(2)対北朝鮮経済協力の拒否(統一時も含む)
       拉致問題解決のカードの一つを放棄することとになるのでは?
       拉致問題が解決できれば、そもそも北朝鮮(統一時も)に積極的に関わる必要性はありませんが。
      >(3)3代目以降に特別永住者の地位を認めない事
       今回の問題とは関係なく、考える必要がある問題。
      >(4)歴史教科書における(近隣国への配慮を定めた)近隣国条項を韓国に限って撤回
       今回の問題とは関係なく、全ての国に対して考える必要がある問題。
      >(5)韓国大衆文化の流入制限
       悪手では。韓国に対する正確な見方が広がれば、必然的に流入は減少するでしょうし。
       むしろ、観光目的でも国内での犯罪発生数(不法残留を含む)などに応じたビザ免除の廃止、韓国人への労働ビザの発給制限等の方が効果的だと思います(これは、正当な労働であっても後に国際的に訴訟問題化する可能性があるから、ということを暗喩)。
       明確な報復措置は必要ですが、理論的な混乱がないように、充分に練った対応が必要でしょうね。
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    • 2. 日比野
    • 2018年11月04日 20:42
    • ス内パーさん。こんばんは。コメントありがとうございます。
      奥薗教授も八幡教授も既に、日韓基本条約の破棄を前提とした主張だと思いますよ。
      八幡教授のFacebookの主張は10/30 15:03に投稿されていて、そちらにはもう少し説明が乗っています。
      https://www.facebook.com/kazuo.yawata
      如何に参照してみます。
      �@日本人が半島に残した個人財産への補償
      日韓基本条約締結に伴う協定及び交換公文形式で放棄されているが、ポーランドやチェコでもドイツ人資産の返還もされており、向こうが個人請求権を言うなら蒸し返しはあり得る。また、北朝鮮に対しては国有財産も含めて白紙だ。
      �A対北朝鮮経済協力の拒否(統一時も含む)
      この点については、近く別途、書くが、日本は日韓国交回復時にいわゆる植民地支配について賠償は行わなかったが経済協力をした。北朝鮮はなお賠償を要求していたが、日朝平壌宣言で経済協力とすることで合意している。しかし、条約でもないし、その後の北の暴虐はこれを反故にする十分な理由となる。
      《続く》
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    • 3. 日比野
    • 2018年11月04日 20:42
    • 《承前》
      �B三代目以降には特別永住者という扱いをしない
      日韓の合意で「資格は2代目まで継承できることとし、3代目以降については25年後に再協議する」とし、1991年に入管特例法により3代目以降にも同様の永住許可を行い、朝鮮籍、台湾籍の永住者も合わせて特別永住許可として一本化された。しかし、この制度を永久に維持するかどうかは日本が決めることだ。
      また、現在、日本に帰化するときは、韓国が帰化希望者に要求しているような、忠誠宣言は要求していないが、これは、世界の常識にしたがって要求するべきものだ。
      �C歴史教科書における近隣国条項を韓国に限って撤回
       近隣諸国条項とは、日本国の教科用図書検定基準に定められている「近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がされていること。」という規定のことである。
       これは、1982年に、1981年度の教科用図書検定について、「高等学校用の日本史教科書に、中国・華北への『侵略』という表記を『進出』という表記に文部省の検定で書き直させられた」という日本テレビ記者の取材をもとにした誤報が発端となり、中国と韓国が抗議して外交問題となり、『「歴史教科書」に関する宮沢喜一内閣官房長官談話』が出され、それに基づいて定められたものだ。
      �D韓国大衆文化の流入制限
       韓国における文化面での日本大衆文化流入制限が撤廃されるまで、同様の措置を日本もとることだ。かつてほどではないが、あいかわらず、地上波放送では、日本のドラマとバラエティ番組は禁止されている。日本も韓流について、同様に扱えば良い。
      《続く》
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    • 4. 日比野
    • 2018年11月04日 20:43
    • 《承前》
      八幡教授の案の根本はちゃんと「相互主義」を主張すべし、ということのように見えます。
      ただ�Aについては、確かにス内パーさんの指摘するように拉致問題を考えると慎重に考える必要はあると思います。また�Dについては、やり方次第でしょう。相互主義について理解が得られればいけるかもしれません。ただ、現時点では日本の世論の理解を十分に得られるかは厳しい気もします。それでも、韓国が日本文化を流入制限していることは知らせてよいように思います。
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