今日はこの話題です。



アメリカの中間選挙の結果が大凡出揃いました。

中間選挙では下院の全435議席、上院は全100議席の3分の1に補選を含めた35議席が改選されたのですけれども、複数のアメリカメディアによると、米東部時間7日午前4時半時点で上院での当選確実は共和が9、民主が22。非改選議席とあわせると、共和51、民主が45。下院の当選確実は共和が199、民主が221と、野党の民主党が8年ぶりに下院の過半数を奪回しました。

上院は与党・共和党が過半数を維持し、これで連邦議会は上院と下院で多数派が異なる「ねじれ議会」となりました。

もっともこの結果については、事前の予想通りでもあり、大きなサプライズがある訳でもありません。また「ねじれ議会」自体も珍しいことではありません。下の図はアメリカ議会選挙での議席の推移ですけれども、過去の政権でも「ねじれている」のが普通でした。

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トランプ大統領は10月、アメリカのメディアのインタビューで「私は候補者を助けているだけで選挙結果は、トランプ政権への人気投票ではない。仮に共和党が下院で敗北したとしても、自分のせいではない」と、中間選挙の勝敗の責任は自分にはないという考えを述べていました。

にも関わらず、トランプ大統領は今回の中間選挙について、「大成功だった」と勝利を宣言。一方、民主党もペロシ下院院内総務が「新しい民主党の優位だ」と宣言するという両者とも勝利宣言する事態となっています。

日本のメディアは中間選挙結果にトランプ政権に打撃だ、と書きたてているところが多いようです。

では、トランプ大統領のいう「大成功」とは一体何か。

トランプ大統領は、中間選挙で地方を遊説して巻き返しを図り、実際に追い上げも見せましたけれども、その選挙応援は上院の過半数確保を最優先し、その次に州知事選挙を優先していました。実際トランプ大統領は11月4日、自分が最も重視しているのは上院の過半数議席維持であり、その取り組みの効果が表れ始めていると、記者団に答えています。

その狙いは何かというと、それはもう言うまでもなく次の大統領選挙です。

確かに下院で民主党が多数を持つ「ねじれ議会」では、予算や法案はこれまでより通しにくくなることに間違いありません。けれども、上院が単純過半数で実行できることがあります。一つは最高裁判事をはじめ連邦裁判所の判事、政府の閣僚や大使などの人事承認、そしてもう一つは自由貿易協定の承認です。

前者については、例えば、最高裁には現在最年長の85歳のルース・ギンズバーグ判事と80歳のスティーブン・ブライヤー判事がいるのですけれども、彼らはいずれもリベラル派とされています。もし彼らが引退した場合、その後任にトランプ大統領が保守派の判事を指名し、共和党が支配する上院が承認すれば、最高裁の保守化が進みます。

アメリカでは、多様な見解があって議会で決定することが困難な争点についてこそ、裁判所が判断する必要があると考えられていて、裁判所が統治機構の一つとして、政治的役割を果たすのが当然だと見做されています。

つまり、共和党と民主党とて対立する争点について裁判所が判断を示す時に、判事が保守派かリベラルかでその結果が変わるであろうことは容易に推測できます。上院で多数を占めることでその人事権を握れるのですね。

更には、大統領選挙でも、誰を最高裁判事に任命するかで投票先を決める人達も存在します。

前回の大統領選挙でも、トランプ候補は予め当選した場合に連邦最高裁判所判事に指名する人物のリストを提示していました。その人物は当然保守派だったのですけれども、その御蔭で、トランプ候補に批判的な共和党支持者でさえ、リストアップされた判事を指名させるために、トランプ候補に投票する事態が発生したと言われています。
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それ以外にも、年内に退任する意向を示しているヘイリー国連大使の後任人事にも、トランプ大統領の共和党が上院多数を占めていることは有利に働きます。

また、後者についていえば、トランプ大統領が11月末に署名するであろう改訂版NAFTA(USMCA)や日本との貿易交渉・合意などは上院過半数の賛成で承認されますから、トランプ大統領にとっては自身の支持層へのアピールにも不可欠な要素です。

そして、大統領選挙には州知事も大きな役割を果たします。

大統領選挙のキャンペーンでは、州知事が党候補の支援として寄付金を募ったりボランティアを集めたりするのですね。

今回の中間選挙では、全米50州のうち36州で知事選が実施されました。中間選挙前の州知事は共和が33人、民主が16人、無所属が1人なのですけれども、アメリカ東部時間7日午前3時半時点でのCNNの集計では、非改選と当選確実を含めると知事が共和の州は24、民主が21、未確定の州が5となっているようです。

州知事の数だけなら民主が勝ったことになるのですけれども、大統領選の鍵を握るスイングステート(激戦州)であるフロリダ、アイオワ、オハイオでは共和党候補が勝利を収めています。

こうしてみる限り、トランプ大統領は次の大統領選を睨んで、戦略的に重点ポイントを絞り込んで狙い通りに勝利したともいえ、その意味では「大成功」だったといえるかもしれません。

今回の中間選挙そのものは大方の予想通りであり、そう大きな波乱はないと思われます。明日の市場の反応をみても、大凡の事が分かるのではないかと思いますね。
 

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