今日はまたこの話題です。



11月8日、菅義偉官房長官は記者会見で、元募集工への損害賠償を認めた韓国大法院判決について「日韓請求権協定は司法府も含む当事国全体を拘束するものだ。判決が確定した時点で韓国による国際法違反の状態が生じている……韓国政府に対し、国際法違反の状態の是正を含め、直ちに適切な措置をとることを求めている」と述べました。

これは、前日7日、韓国の李洛淵首相が日本側の要求に「日本政府の指導者たちの発言は妥当ではなく、賢明でもない……司法部の判断は政府間外交の事案ではない……司法部は法的な判断をする機関で、司法部の判断には政府が介入しないことが民主主義の根源だ。日本政府の指導者たちもそれが分からないはずがない」と批判したことに対する反論です。

李洛淵首相は、「大法院の判決は1965年の韓日基本条約を否定したものではなく、条約を認めながらその土台の上で条約の適用範囲を判断したもの」として、「私はこの問題に対する言及を最大限自制し、政府の関連官庁や民間専門家の知恵を集め対応策を講じるため努力している」と述べているのですけれども、言うに事欠いて、日韓基本条約を否定しないがその適用範囲を変えるなどと、呆れるばかりです。

日韓基本条約に「完全かつ最終的な解決」と記されているにも関わらず、適用範囲を判断できるならば、条約など後からいくらでも上書き出来てしまいます。

菅官房長官は「日韓請求権協定は司法府も含む当事国全体を拘束するものだ」と一刀両断に斬って捨て、返す刀で韓国は国際法違反をしている、と糾弾しています。まぁ、そうとしか言い様がありません。

ただ、李洛淵首相は日韓基本条約は否定していないと発言していますし、別の大統領府高官も「政府の既存の立場と異なる司法府の判決が出て、わが政府の立場を整理しなければならない状況だ。やや時間がかかる」と述べています。日韓基本条約が否定できず、かつ今回の司法判断が従来の政府の立場と異なる事を認めたのは、それだけ日本の攻勢に押し負けたということなのかもしれません。

今回の元募集工判決に対する日本側の反撃では、河野太郎外相が相当活躍していますけれども、世間での評判が急上昇しています。

河野外相が外交初デビューで、中国の王殻外相に対し「中国は大国としての振る舞い方を身につけていただく必要がある」と反論するなど、物事をはっきりいう政治家です。今回の元募集工判決でも、過去の経緯を含め、世界に明確に発信しています。

筆者もここまでやるとは思っていなかったです。自分の不明をお詫びしたいと思います。

河野外相は外務省で開かれた新旧大臣交代式で「職員の皆さんの中には父の河野洋平外相と一緒に仕事をした経験がある人もいると思うが、河野洋平と河野太郎は人間性も考え方も全く違う……・当時の経験は横に置いて、河野太郎とお付き合いしていただきたい」と挨拶したそうですけれども、正にそれを証明しているように思いますね。

近頃は河野外相はポスト安倍としての声も上がるようになって来ていますけれども、それを見据えると、今回の問題をどう捌いていくかは重要な試金石になるような気がしています。

というのも、今回の問題は、韓国に進出している邦人企業に深く関わっているからです。

ネットでは韓国と断交すべしという声がどんどん大きくなっているようですけれども、曲りなりにも国交のある他国と断交するのはそう簡単なことではありません。それが経済的繋がりがある国であれば猶更です。その国で利益を出していた企業を説得して引かせるには、それなりの準備と信頼がなければ出来るものでありません。

政府や外相の指示に従っても大丈夫なのかという不安を払拭し、なおかつ最低限の結果を出す。国交断絶したはいいが、その煽りで数多くの企業が倒産することになるような事があれば、支持されなくなってしまいます。

その意味では河野外相は外相としてはベストに近い対応をしているかもしれませんけれども、経済という切り口では、どこまでやってみせる事が出来るのか。そうしたことを問われているのではないかとも思うんですね。

この課題を見事クリアした先に、河野太郎総裁の椅子が見えてくる。そんな気がしてなりません。

10月23日、麻生太郎副総理は河野太郎外相のパーティーでの挨拶で、河野外相について「英語はうまいし、間違いなくそれなりの存在はきちんとできあがっている」と持ち上げつつも、「何が欠けているといえば、間違いなく一般的な常識に欠けている」と紹介。「政治家として伸びていくために一般常識を磨かなければいけない。学生時代も勤めた会社も海外だから、発想が欧米的だ。……飲ませたり食わせたりしないと政治家として成長しない」と麻生流のアドバイスを送っています。

此の期に及んで、一般常識を身に着けろ、飲んだり食ったりしろ、というのは、要するにもっと人付き合いをしろということです。これは人脈を築いて、支持者を増やしていくことにもなりますから、将来の総理の道をも示唆しているようにも聞こえますね。

麻生副総理の目からみて、あともう一段、一般党員や自民党議員からの支持を集められるようになれれば、ポスト安倍も視野に入って来る。そんな感じに見えますね。

その意味では、今回の募集工問題について、財界をも納得させられるくらい捌き斬れるか。河野外相が次の総理の座を射止められるかの大きなステップになるのではないかと思いますね。
 

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