今日はこの話題です。
11月17日、中国の習近平主席はパプアニューギニアの首都ポートモレスビーで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の関連会合「最高経営責任者サミット」で演説し、アメリカのトランプ政権の対中批判に対し反論しました。
習主席はアメリカが中国製品に制裁関税を課した事について「人為的に障壁を築いて各国の連携を絶つのは歴史の潮流に反し成功しない」と批判。「中国製造2025」や知的財産権侵害への批判に対しても「科学イノベーションの成果は囲い込んだり、少数の人の金儲けの道具にしたりすべきではない」とし、保護主義に反対するよう呼びかけました。
更に「一帯一路」が、中国による覇権主義的な動きだとの指摘についても「開放的な協力のプラットホームであり地政学な目的はない」と釈明。中国の投資を受け入れた国の財政が悪化し、政治的介入を招く「債務のわな」批判についても「『わな』などというものはない」と反論しました。
中国に対する批判一つ一つに一々反論しなければならないということは、それだけ効いているということです。
数年前の中国はもっとイケイケでした。
2014年のAPECでは、習主席は精力的に各国首脳と会談をこなし、「一帯一路」への参加・協力を呼び掛けていました。
中国共産党中央直属の中国網は、習主席の名言集なる記事をドヤ顔で掲載した程です。
それから4年。習主席は世界からの批判に釈明をしなければならない状況に陥っています。
習主席の演説の後、登壇したのはアメリカのペンス副大統領です。
ペンス副大統領は、トランプ政権が昨年打ち出した「インド太平洋戦略」を説明。日本やインド、オーストラリアと連携して「自由で開かれたインド太平洋を目指す」と強調し、「インド太平洋に対するアメリカの投資総額は1兆4千億ドルに上る」と指摘。「アメリカ第一とはアメリカ単独という意味ではない……アメリカは域内諸国との友好・パートナー関係を求めている」と強調しました。
ペンス副大統領は更に、インド太平洋諸国に対するインフラ支援を600億ドル規模まで拡大すると正式表明し、域内諸国の汚職対策として4億ドルを拠出するなどの新施策を発表しました。
同時にペンス副大統領は、中国の関税障壁や知的財産権の侵害を強く批判し、「中国が行いを正さない限り、アメリカは姿勢を変えない」と述べ、中国が世界全域で巨額融資を行い、相手国を債務不履行に陥らせる「借金漬け外交」を展開していると改めて批判。「主権や独立性を損ねるような債務を受け入れてはならない。アメリカはそのような行為はしない」と宣言しました。
米中対立は誰の目にも明確です。
対立は演説だけではありません。各国との首脳会談を巡っても、牽制と駆け引きが行われています。
習主席は15日夜、APECの開かれるパプアニューギニアへ、他国首脳に先駆けて前乗り。
翌16日にAPEC議長を務めるパプアニューギニアのオニール首相と会談。共に発展するための全面的な戦略パートナー関係を築くことで一致したと伝えられています。
また、クック諸島やフィジー、ミクロネシア、ニウエ、サモア、トンガ、バヌアツとの8ヶ国首脳会談を開いています。
けれども、台湾と外交関係を結ぶソロモン諸島やキリバスなど6ヶ国は除外しているのですね。
現在、台湾との国交樹立国は17ヶ国あるのですけれども、オーストラリアのシンクタンク、ローウィー研究所のジョナサン・プライク氏は、「台湾と外交関係を結んでいる国のうち、ほぼ3分の1が太平洋諸島諸国であり、世界の中でもこの地域では小切手外交が健在だ……中国は台湾の支持基盤を切り崩そうと、ますます攻勢を強めている」と指摘しています。
要するに、中国は、札束で頬を叩いて台湾と断交するよう迫っているとも言えるのですね。
小国にとって世界第2の経済大国である中国との関係を断つことによる損失は計り知れません。現実問題として、中国の札束攻勢にどこまで抗えるのかは疑問です。
一方、アメリカは台湾との距離を縮めています。
17日、ペンス副大統領は台湾のAPEC担当特使を務める半導体大手、TSMCの張忠謀前会長と会談しています。張氏は台湾当局者ではないものの、蔡英文総統の特使として今回のAPEC会合に参加したそうです。
まぁ、蔡英文総統とペンス副大統領が会談したら、中国が建前としている一つの中国に正面から喧嘩を売ることになりますからね。それを微妙に避けつつも、台湾に接近している姿をアピールする。思いっきり中国を牽制しています。
ペンス副大統領はインド太平洋諸国に対するインフラ支援を表明していますけれども、アメリカは中国のような国家主導型の支援ではなく、民間部門への融資を通じて持続的な経済発展を促すとしています。
これも中国の札束外交への対抗でしょう。
日本にとってもインド太平洋諸国に食い込んでいくのは、「自由で開かれたインド太平洋戦略」に則ったものでもある訳で、積極的に進めたいところです。
ただ、日中が激しい受注争いをしたインドネシア高速鉄道計画が土壇場で中国にひっくり返された苦い経験がありますし、最近でも、これまたインドネシアで、日本の野村証券が青写真を描いた産業育成を、インドネシア政府が計画までを日本にさせて、その実行は韓国にさせようとしているなど、一筋縄ではいかなかったりしています。
こうした"裏切り"に近い振舞いがインドネシアだけのものかどうか分かりませんけれども、そうした困難を解決しつつ、中国の覇権主義を封じていかなければならないことを考えると、やはり日本の役目は大きいと言わざるを得ません。
APECで増々鮮明になる米中対立。日本も鍵を握る一国として、しっかりと絡んでいかなければいけないと思いますね。
コメント
コメント一覧 (2)
今後も、後半部で指摘されたような、土壇場での意趣返しや裏切りに近い行動は、出て来ると思われます(苦笑)。
本質的には、諸国すべてが"風見鶏"である、と言いますか。
「国家に真の友人は居ない」と、あらかじめ冷静な(醒めている)心構えで居た方が、後々のショックは少ないのかも知れません…
kotobukibune_bo
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がしました
米・中間選挙の結果、今後、トランプの中国共産党解体政策が失速することになれば、トランプ任期満了後に来るのは、日本の国家存亡の危機である。
そこを見据えた上で、日露提携を持ち掛けてくるプーチン大統領の先見性と、その意を汲み取れないらしい安倍総理の視野の狭さ。
今、日本が打たなければならないのは、中国共産党・習近平を、経済的にも軍事的にも封じ込める手々である。
kotobukibune_bo
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がしました