今日はこの話題です。



11月14日、シンガポールを訪問した安倍総理はロシアのプーチン大統領と会談しました。

会談は全体会合約45分、テタテが約40分で行われました。

テタテとは二人の内緒話、差し向かいで、という意味の政治用語で、フランス語(tete-a-tete)を語源とします。サシの会談なので、通訳のみが同行し、相当に密な内容になるのが通例です。

会談の内容は、外務省のサイトで公開されていますけれども、平和条約、経済協力など議論が交わされました。

会談後の記者会見で安倍総理は次のように述べています。

先ほどプーチン大統領と日露首脳会談を行いました。その中で通訳以外、私と大統領だけで、平和条約締結問題について相当突っ込んだ議論を行いました。2年前の長門での日露首脳会談以降、新しいアプローチで問題を解決するとの方針の下、元島民の皆さんの航空機によるお墓参り、そして共同経済活動の実現に向けた現地調査の実施など、北方四島における日露のこれまでにない協力が実現しています。

この信頼の積み重ねの上に、領土問題を解決をして平和条約を締結する。この戦後70年以上残されてきた課題を次の世代に先送りすることなく、私とプーチン大統領の手で終止符を打つ、必ずや終止符を打つというその強い意思を完全に大統領と完全に共有いたしました。

そして1956年、共同宣言を基礎として、平和条約交渉を加速させる。本日そのことでプーチン大統領と合意いたしました。来年のG20においてプーチン大統領をお迎えいたしますが、その前に、年明けにも私がロシアを訪問して日露首脳会談を行います。今回の合意の上に私とプーチン大統領のリーダーシップの下、戦後残されてきた懸案、平和条約交渉を仕上げていく決意であります。ありがとうございました

目される北方領土問題については、そのテタテ会談の結果として「1956年宣言を基礎として平和条約交渉を加速させる。そのことをプーチン大統領と合意した」としています。

ここで具体的に触れられた1956年宣言というのは、1956年に締結された日ソ共同宣言のことです。

日ソ共同宣言中で、北方領土に触れた部分を次に引用します。
9 日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は,両国間に正常な外交関係が回復された後,平和条約の締結に関する交渉を継続することに同意する。

ソヴィエト社会主義共和国連邦は,日本国の要請にこたえかつ日本国の利益を考慮して,歯舞諸島及び色丹島を日本国に引き渡すことに同意する。ただし,これらの諸島は,日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の平和条約が締結された後に現実に引き渡されるものとする。
このように、歯舞・色丹を平和条約締結後に引き渡す、となっています。これを基礎として平和条約を加速させると合意したということは、宣言の文面通りに捉えるならば、ロシアとの平和条約を結んで、歯舞群島と色丹島の2島返還がベースということになります。

平和条約締結を前提として、4島返還を見据え、2島先行返還がスタートになるかそれともゴールになるのかはこれからの交渉ということなのでしょう。

ロシアは、北方領土を日本側に引き渡せばアメリカ軍が展開し、ロシアにとって脅威になる可能性があると強い懸念を示していました。

安倍総理は2016年11月にペルー・リマで開かれた日露首脳会談で「北方領土は非軍事化するというのが日本の考え方だ」とプーチン大統領に伝えていたのですけれども、プーチン大統領はこれまでの会談で、北方領土にアメリカ軍の基地を置かないことを安倍総理とトランプ大統領の間で公式な文書で合意し、確約するよう求めていることが明らかになりました。

口頭では信用できないということでしょうけれども、こうした情報が、今のタイミングで明らかになるということは、それだけ交渉が進んでいるとも言えます。いよいよいよいよ大詰めが近いのではないかと思われます。



安倍総理は記者会見で、ロシアと平和条約交渉を進める際に「交渉の対象は4島の帰属の問題だ」と、従来の政府方針は変わらないと説明していますけれども、日ソ共同宣言を基礎とすることで安倍総理とプーチン大統領で合意したということは、やはり2島先行返還が前提にあり、その上で4島の帰属問題を積み上げて交渉するのではないかと思いますね。

鈴木宗男・新党大地代表は、北方領土問題について、「安倍首相は『2島+アルファ』で決断する……首相は日ソ共同宣言を基礎とした平和条約交渉に入ることを決断すると思う。またしなければ北方領土問題は解決できない」との見通しを示し、2島返還に加え、残る国後、択捉2島の元島民の自由往来や共同経済活動を組み合わせた「2島+アルファ」が必要だと述べています。

筆者も、この辺りが現実的なところだと思いますし、安倍総理の2島返還先行という方針変換は評価したいと思います。

なぜなら、今の国際情勢を見ればロシアと平和条約を締結するメリットが極めて大きいからです。

北方領土問題の2島返還後の交渉は別としても、原油、天然ガスなどのエネルギー輸入の多様化が計れますし、対中国牽制という意味でも大きい。また、日本をブリッジにして、米露の距離も縮まることになるでしょう。

安倍総理は年明けにプーチン大統領と首脳会談し、平和条約交渉を仕上げていくと述べていますから、早ければ来年前半にも日露平和条約が結ばれる可能性も出てきました。

日露平和条約の締結によって、世界の安定化は大きく前進すると思いますね。
 

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