今日はこの話題です。
11月18日、パプアニューギニアの首都ポートモレスビーで開かれていたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議が閉幕しました。
ところが、アメリカと中国が対立して議論は紛糾。議長を務めたパプアニューギニアのオニール首相は首脳会議閉幕後、記者団に対し、首脳宣言をとりまとめられなかったことを明らかにしました。
首脳宣言を採択できなかったのは、1993年の第1回首脳会議以来初めてのことだそうです。オニール首相は世界貿易機関(WTO)改革や一国主義を巡る文言で対立したことが原因だと明らかにしています。
WTO改革については、こちらの経産省のサイトで公開されていますけれども、9月25日、ニューヨークで開かれた日米欧の貿易相会合でWTOの監視機能を強める改革案の共同提案で合意しています。
中国は未だに自身を発展途上国だと宣言し、貿易において恩恵をむさぼっています。世界から先進国として扱かわれるべきだと批判されても受け入れません。今年6月に中国国務院新聞弁公室は「中国と世界貿易機関」白書を発表し、中国は依然世界最大の発展途上国だとしています。
先のWTO改革案に関する日米欧の共同声明には「途上国地位の自己宣言と相まった、過度に広範な途上国の分類が、WTO が持つ新たな貿易拡大的な合意に向けた交渉能力を制限し、その合意の効果を阻害している」と宣言されているのですね。
名指しこそされていませんけれども、対中国を念頭に置いていることは明らかです。
また、一国主義を巡る文言というのも、米中関税戦争のことを指しているものと思われます。
これらの文言が原因で首脳宣言が纏めらなかった。つまり米中が互いに譲らなかったということです。
ところが、今回の首脳宣言を巡ってある事実が暴露されました。
APECに参加していた中国側代表団のメンバーが、議長国であるパプアニューギニアのリムビンク・パト外相の執務室に乱入しようとしていたとAFP電などが報じています。
これは、中国代表団のメンバーが首脳宣言をめぐってパト外相に会いたいと交渉。WTOなどに関して中国を非難するような文言が入らないように、全体として中国に有利な方向に宣言の文言を調整するよう交渉しようとしたというのですね。
パト外相は中国代表団との面会を拒否。その後、警官に警護を依頼して外相の執務室前に警官が配置されました。最終的に首脳宣言は出さないという今回の事態となったのですけれども、中国外務省の高官はこの騒ぎについて、報道陣に対して「真実ではない。断じて真実ではない」と弁明。執務室への乱入をバラされ、慌てふためいています。
真実ではないと二度も言う程焦っている中国ですけれども、オーストリアのメディアによると「首脳宣言が出されなかったのは初めてでも、中国が難癖を付けて文言を調整させようとAPEC議長国の執務室に殴り込んだのは、これが初めてではない」と伝えているようです。
やはりこれが現実なのですね。どの国も自国の国益を最優先して行動します。
これでもひと昔、ふた昔前であれば、武力に訴えて力づくでいうことをきかせていたことに比べれば、まだマシだといえるかもしれません。
今の中国は時代遅れの帝国主義を振りかざしていますけれども、それでも、首脳宣言を自らに都合よく変えさせようとしたということは、法を道具として使う程度には考えているということです。
なぜなら、中国以外の国々が国際法を尊重しているからです。流石の中国も、全世界を敵に回すだけの力はありません。それゆえ、国際的取決めや、宣言を自分に都合のよい文章にすることで、国益を確保しようとしているということです。逆にいえば、中国が一国で世界を相手に出来ない今だからこそ、法によって牽制することが出来るのだとも言えます。
ただ、法に頼るだけでは限界があります。法を実現するための裏付けがなければなりません。
今回習近平主席は、パプアニューギニアやトンガなど8ヵ国と首脳会議を開き、「一帯一路」への連携を取り付け、中国による莫大な支援を約束しています。札束攻勢で中国に寝返らせようと画策しています。
これに対してアメリカのペンス副大統領はインド太平洋諸国に対するインフラ支援を600億ドル規模まで拡大すると正式表明。APECに先立つ13日にペンス副大統領と安倍総理とでインド太平洋地域を中心とした社会基盤整備に日米が協調して最大700億ドルの支援を行うことで合意しています。
インド太平洋を巡る、日米対中国の主導権争いは、これから正念場を迎えることになると思いますね。
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