今日はこの話題です。



先月31日、アメリカは、インド太平洋地域への関与を強めるための新たな法律を成立させました。

これは「アジア再保証イニシアチブ法」という法律で、日本など同盟国との関係を強化するほか、各国の防衛力の整備などを支援していくとしています。

中でも注目すべきは「SEC. 201. AUTHORIZATION OF APPROPRIATIONS」です。この中の「b)の第3項」で次のように述べています。

(3)合衆国にとって最も能力の高い同盟国、およびパートナーと二国間、多国間で定期的な関与を行い、戦略的課題に対処するために使用される。この戦略的課題には以下が含まれる。

 (A)中華人民共和国によるある種の不安定化活動。加えて、

 (B)朝鮮民主主義人民共和国の核および弾道ミサイル計画のような新たな脅威

思いっきり名指ししています。連邦議会はこのアジア再保証イニシアチブ法に対し、2019年-2023年度まで各年度「15億ドル」の予算をつけています。もちろん、上記の中朝の脅威に対応するために使われます。

具体的には、東シナ海や南シナ海で同盟国との共同訓練や「航行の自由」作戦を続け、台湾に対しては武器の売却やアメリカ政府高官の訪問を進めるとしています。

更に、知的財産権の侵害を防ぐことや、中国で民主主義や人権の尊重を促進するなど、中国に長期的に対抗していく姿勢を鮮明にしています。

何やら昨年秋のペンス演説の一部がそのまま法案化された感すらありますね。

これに対し、中国は反発。1月2日、中国外務省の陸慷報道官は「法案は中国の内政を乱暴に干渉するものだ。強い不満と断固たる反対を表明する……台湾の問題を慎重に処理し、両国の関係や台湾海峡の平和と安定を損なわないよう、アメリカに促す」とアメリカ政府に抗議したことを明らかにしています。

けれども、中国が口で反発したところでアメリカの方針が転換する訳もありません。

1月2日、中国の習近平主席は北京で開かれた「台湾同胞に告げる書」発表40周年記念大会で演説を行い「一国二制度」や「統一」に複数回言及しました。

演説で習主席は「『九二共識』を堅持し、『台湾独立』に反対するという共同の政治的基礎の上で、両岸各政党、各界が代表を推挙し、両岸関係と民族の未来について、広範で踏み込んだ民主協商を展開し、両岸関係の平和発展について制度的配置の実現を推し進める」と一国二制度を強調しました。

けれども、習主席は同時に「中国人は、同じ中国人を戦いの相手にしない。われわれは、武力の使用を放棄することを約束せず、あらゆる必要な措置を取る選択肢を保有するが、それはあくまでも外部勢力の干渉と極めて少数の『台湾独立』分裂勢力および分裂活動に対するもので、決して台湾同胞を対象とするものではない」と台湾統一で武力行使を排除しない姿勢を明確にしています。

アメリカの圧力に焦りを覚え、台湾の取りこみに動こうとしたのかもしれません。或いは、昨秋の台湾統一地方選で与党民進党が敗北し、党主席を辞任することになった蔡英文総統を見て、今がチャンスだと思ったかもしれません。

これに対し、台湾の蔡英文総統は談話を発表し、習近平主席の「一国二制度」演説を拒否しました。

蔡総統は、一国二制度は「台湾の絶対的多数の民意が断固として反対しており、コンセンサスだ」と強調し、習主席が提案した台湾の党派や団体との政治対話も「台湾人民の授権と監督」を経た当局間の対話でなければならないと否定。「圧力や威嚇を用いて台湾人民を屈服させる企てであってはならない」と述べました。

確かに香港の末路をみれば、一国二制度の甘言に乗って、仮初めの経済発展をしたところで、その行き先が台湾の望むものにならないことは明らかです。

アメリカの圧力を受け、習主席が台湾の囲い込みに動くということは逆にいえば、台湾は中国にとっての急所でもあるということです。

それを考えると、やはり台湾は環太平洋の自由主義国家圏の中に留まらせる為にも、日本はより一層台湾との関係を強めていくべきだと思いますね。
 

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