今日は既に周回遅れの感があるこの話題です。



"小4の中村君"が作ったサイト「どうして解散するんですか?」が注目を浴びた問題で、関与を疑われていたNPO法人「僕らの一歩が日本を変える」の代表・青木大和氏が22日、ツイッターで「今回の一連の騒動は全て私1人が行いました」と謝罪、代表を辞任した。

事の発端は11月20日、小学校4年生の中村と名乗る人物が、学校の友達と作ったと衆議院解散の是非を問うサイト『どうして解散するんですか?』を公開し、その小学生らしからぬ出来栄えに注目が集まり、著名人のツイッターやスポーツ新聞で取り上げられ、一気に話題となった。

だけど、サイトが余りにも小学生離れしていることから、ネットユーザーのあら探しが始まり、次々と怪しい事実が暴露され炎上した。

その経緯はこちらの纏めサイトこちらのブログで紹介されているから、詳しいことはそちらに譲るけれど、ネットにおけるステマというものを改めて考えさせられる事例ではある。

ステマについて、筆者は以前「ステマと1%の常連」というエントリーで、人気グルメサイト「食べログ」でステマが行われた事件について、食べログの"ステマ"を見破るサイト「ステログ」を取り上げたことがある。

「ステログ」では食べログへの投稿者の頻度や長さを基準に投稿者を「信頼できる高評価者」「頻繁な高評価者」「初投稿で高評価者」の3つのカテゴリーに分け、「信頼できる高評価者」が多数評価している店が、ステマでないと思われる店という具合にカテゴライズしている。

筆者はこの判断方法は、ネットコメントの特性を活かした、上手い方法だと思っているのだけれど、これは要するに、投稿者の人物について一定の時間を掛けることで作為をなるべく除去しようという方法。

この「ステログ」基準で判定するならば、"小4の中村君"は、「ネットに詳しくない常連さんか、意図がある投稿」という"初投稿で高評価者"にカテゴライズされ、ステマの可能性有りと判定される。

事実は、"小4の中村君"は、NPO法人「僕らの一歩が日本を変える」代表の青木大和氏であり、くだんのサイトは、かつて天才高校生と騒がれ、プログラマーとしても活動していたTefu氏の協力の下、作られたものだった。

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だけど、そんな元・天才プログラマーが起こしたサイトでも、現役の天才プログラマーから見ると、色々と粗が見えるようで、2005年に独立行政法人IPAに天才プログラマーとして認定され、現在ユビキタスエンターテインメント代表取締役社長である清水亮氏は、次のように述べている。
Tehu氏はそもそも数々のメディアに登場し、発信力がある人なので、自分のブログなりどこかのメディアなりに寄稿すれば意見表明は十分できたはずです。

Tehu氏に意見表明する意図がなく、青木大和氏の表現を手伝っただけ、とするならば、あまりにもやってることが杜撰すぎて、いちクリエイターの仕事としてひどく失望します。

 小学四年生を名乗るという手法そのものの卑劣さをさておいたとしても、バレバレの JavaScript、わざとらしい黒板やノート、そして消しゴムと鉛筆の意匠はコミュニケーションデザインとしても決して褒められたものではありません。

 仮にこれが広告代理店のコンペで、「こんな小学生のサイトを作る作戦でいきましょう」と言われたら、「そんな小学生いるわけないだろ」とすぐにボツを食らうレベルだと思います。

 では彼らはどうすべきだったのか。

 そもそも青木大和氏は NPO法人の代表として活動していたわけですから、普通に自分のブログなりで発言すればよかったんです。「どうして解散するんですか。 700億円もかけて解散する理由がわかりません」と。

 それならそれで、そういう、いい年になっても選挙の意義を理解できないという、自らの理解力の限界を表明するだけで構わないわけです。

 しかし当然ですが、いい年こいた大学生である青木氏が、そんなブログを書いても「法学部にいてそんなこともわからないお前が悪い。もっと勉強しろ」などと言われるだけで、世間の注目を集めるのは難しい。つまり発信力に乏しいと思ったのでしょう。

 そこで小学四年生という設定を考えたのではないかと思います。漢字もわからない小学生なら、「どうして解散するんですか」と問いかけても「もっと勉強しろ」とは言われないはず、という姑息な計算があったのではないでしょうか。

 しかし当たり前ですが、小学生に解散総選挙の意義を伝えるのは難しい。というかほとんど不可能でしょう。しかもこの小学生が問題にしているのはあくまでも「学校の先生が減らされること」と「お小遣いが増えないこと」です。いち小学生の家庭の事情 (小遣いが増えないのは教育方針かもしれないし)や教育政策ついてに答える義務はありませんし、理解できるよう説明するのは非常に難しい。仮に時間をかけて説明したとしても子供が本当に理解できるかはわからない。そういう難問なのです。

 つまり、自分は小学生という安全地帯に逃げておいて、相手がなにもできないような状態で今回の解散総選挙を行う自民党を批判しているのです。

 こんな意見表明の方法が卑劣でなくてなんでしょうか。
このように清水氏は、意見表明をしたければ、正々堂々とすればよいだけの話であり、小学生という安全地帯に身をおいて意見表明するのは卑劣である、と手厳しく批判している。筆者も全く同感。

自民党だろうが民主党だろうが、どこかの国とは違って、批判や意見を述べる自由が日本にはあるし、その意見に説得力があり、他の人を納得させられる力があれば賛同も得られる。

実際、11月20日、お笑い芸人のたむらけんじ氏がツイッターで「安倍さん、軽減税率もせなあかんやろうけど、議員の定数削減は公約にせえーへんの?野田さんと約束してたやん、それが約束で選挙したんやん!嘘ついたらあかんって教えられたでしょ?そして子供達にもゆうたでしょ?国民の事アホや思てるんやろな。残念だ。」と発言したところ、そのとおりよく言った、などと、多数の賛同意見が寄せられている

世間の反応は侮れない。

清水氏はくだんのサイトについて「広告代理店のコンペで、『こんな小学生のサイトを作る作戦でいきましょう』と言われたら、『そんな小学生いるわけないだろ』とすぐにボツを食らうレベル」と指摘しているけれど、今回のステマがバレてしまったのも、やはりその内容に不自然さがあり、世間の多くが怪しいと感じたからだろう。

こちらのブログでは、くだんのサイトの文章が、"読み手を意識できすぎている"ことから小学校4年生らしさはないとして、小4ならこんな文章になるはずだ、と"添削"している。

今のネット社会では、無理して"なりすまし"をしたとしても、このように忽ちのうちにその化けの皮が剥がされてしまう。

かつてマスコミは「ネットは嘘ばかりだから信じてはいけない」なんて批判していたような記憶があるのだけれど、今回の"小4の中村君"サイトに疑問の声を挙げるどころか積極的に取り上げたのはむしろマスコミではなかったか。

ネットが発達していなかった昔であれば、マスコミは取材で裏取りなどして、化けの皮がついた報道をしないようにしていた面があったが故に、朝日の慰安婦捏造のように、意図的に嘘を混ぜられてしまうと大衆がそれに騙されてしまうのを避けるのは困難だった。

だけど、朝日の捏造によってマスコミ自身が嘘をつくということが明らかになった今、ネットの情報も、マスコミの報道もある意味「フラット」になってしまって、多くの一般大衆のチェックを受けなれば、正しい情報に接することが難しくなってしまっているのかもしれない。

その意味では、個々人が如何に信頼できるソースを自分で見出し、折々にそれを見直していくという、リテラシーの部分がより求められる時代に突入しているのだと思う。

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コメント

 コメント一覧 (1)

    • 1. sdi
    • 2014年11月25日 23:46
    • 今回の件、私は「先祖がえり」だと思っています。
      「動機が正しければ、手段を選ぶ必要はない」というのが今回の「彼ら」(あえて複数にします。青木大和氏の単独犯行と私は考えていません)の行動原理です。明確に意識していない可能性はありますがね。そして、この行動原理は1970年代の新左翼がそれそのものです。年齢からいって、「彼ら」は「浅間山荘事件」や「よど号ハイジャック」なんて知らないでしょう。知識として「ふーん、そんなことがあったんだ」くらいで、そこから教訓を得ようなどと考えないでしょうね。新左翼が何故ものの見事に日本社会の世論から完全に見捨てられたかを、「彼ら」は学んでいないと思います。その結果として同じ轍を繰り返すことになった、とわたしは見ています。
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