今日はこの話題です。



1.はじめに

「小説家になろう」で連載していました、日比野庵ラノベプロジェクト第二弾「ロシアンルーレットで異世界へ行ったら最強の魔法使いになってしまった件:第二部」ですが、目出度く2月14日に完結しました。

 お読みいただけた方にこの場をお借りして、心より御礼申し上げます。m(__)m

 今日は第二部の制作こぼれ話をば。

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2.スティール・メイデン

 物語の序盤から登場した三人組スティール・メイデン。アイアン・メイデンを捩ったネーミングですけれども、実はダブルミーニングを仕込んでいます。中部圏の鉄道で、名古屋電気鉄道、通称名鉄あるいは名電。というのがあります。

 スティール・メイデンの名称はここから拝借しました。"鋼の処女(アイアン・メイデン)"ならぬ"鋼の名電"(爆)。

 三人組の名前、ミカキーノ、ロッケン、ハーバーですけれども、実は名鉄・各務原線の駅名だったりします。ミカキーノ(三柿野)、ロッケン(六軒)、ハーバー(羽場)です。本当にある駅です。

 本作の登場人物・地名は何気にこの路線絡みの名称が出てきます。主人公ヒロの苗字は"各務"ですし、名鉄・各務原線はそのまま愛知に入れば"犬山駅"に着きます。更についでにいえば、第一部の冒頭に出てきたルイージ似の汎世界管理人のタガミですけれども、名鉄・各務原線に"田神"という駅があります。

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 筆者がファンタジーでイメージするのは、やっぱり「ロードス島戦記」なんですよね。

 そこからいくとミカキーノは、パーンの防具を銀色にして、若いウッドチャック(CV:若本規夫)に着せたというイメージです(笑)。体格は、ウッドチャックより一回りがっちりしている感じ。

 ハーバーは肉弾戦は苦手で、身を隠しながら遠距離&高速移動しながらの攻撃を主にするという設定で、ロッケンは、繊細で少し暗め。無口で友人も少ないですが、その代り信頼できる友人には饒舌で協力を惜しまないタイプ。見かけは線の細い文学青年という感じですね。

 スティール・メイデンはならず者の冒険者ですが、実は、当初、ブラック・アンタッチャブルを引き立てるための雑魚キャラとして設定していました。ところが、雑魚キャラが雑魚程度の弱さしかないと、ブラックアンタッチャブルの強さが引き立たないので、それなりに強いキャラにせざる得ず、それを示すためにゴブリンの大群を軽く退けるエピソードが生まれました。

 ただ、スティール・メイデンを書いているうちに段々とキャラが立ってきたというのもあって、設定を追加、ロンボクとロッケンの過去エピソートを加えました。これにより大量の文章追加となりましたけれども、広がりが出たのかなと思っています。雑魚として作ったキャラが意外と存在感を出したので驚きでした。

 スティール・メイデンはブラック・アンタッチャブルにやられてから、舞台からあっさり退場してしまいましたけれども、これは当初雑魚キャラだった名残です。ただ、立ったキャラですから勿体ない感じがあります。第三部以降で登場させられればいいですね。




3.鎖帷子

 第二部で鎖帷子(チェーンメイル)が登場します。鎖帷子は、構造が単純なことから製造しやすい上に柔軟で汎用性も高いため、プレートアーマーが登場する以前から使われていた防具です。

 13世紀頃は鎖帷子で全身を被い、サーコートという布の上着を着用するスタイルを取っていました。

 鎖帷子は丸いリングが重なりあって出来ていますけれども、通常は1つのリングに4つのリングを繋いで編んでいきます。「ヨーロピアン4-1」とも呼ばれているようです。

 一般的に鎖帷子は軽くて柔軟性があり剣による斬撃には有効でした。赤穂浪士が吉良邸に討ち入りをしたとき、吉良方の侍が赤穂浪士に一太刀浴びせたものの、はね返されて手傷一つ負わせることが出来なかったとの記述が残っています。

 その一方で、鎖帷子は突きに弱いとされているのですけれども、あくまで甲冑に比べて弱いというだけで、全体重を掛けて余程の力で突かない限り、中々破れるものではなかったようです。かの新選組では、反りが少なくて刀身の厚い、突きに向いた刀を隊員に持たせ、「突きの稽古」を重んじたといわれています。

 本編では、鎖帷子の編み方について、道具屋のカダッタに語らせていますけれども、鎖帷子もその構造によって柔軟性がかなり変わるようです。これについては、こちらのサイトで鎖帷子の構造を検証され、中々興味深い結果を報告されています。径の異なる鎖を繋げていくことで柔軟性を維持しつつ、突きに弱い弱点もある程度カバーできるようです。

 本編ではこのサイトの検証結果を参考にさせていただきました。

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4.血と疫病

 ゴブリンとの戦闘で、ゴブリンの血液が青いという描写があります。これは人とは違った種族感を出したいというのもありましたけれども、世にあるファンタジーではゴブリン、あるいはオークなどは緑の肌を持っているという設定が多いということから、それに倣いました。

 まぁ、多くの読者が持っているであろうイメージに便乗させていただいたということなのですけれども、となると気になるのは血液の色です。人の唇が赤いのは皮膚が薄く血液の色が透けてみえるからです。とすると、肌の色が緑であれば血液の色もそれなりでなくてはなりません。なので必然的に血液は青という設定となりました。(ガミラス人も血液は青でした(笑))

人間の血が赤い理由は、血液に含まれる赤血球が赤いからです。赤血球はその大部分がヘモグロビンという蛋白質の色素で占められているのですけれども、その色素の中心に鉄があり、酸化することで酸化鉄の赤色を帯びます。これが人の血が赤い理由です。

 ところが動物によっては、ヘモシアニンという色素の中心に銅を持つものがいます。ヘモシアニンの銅が酸化すると酸化銅となり、血液が青くなるのですね。蛸や烏賊がそれにあたります。

 また、更にホヤなどは色素の中心にバナジウムを持っており、硫酸と含窒素化合物が結合したヘモバナジンという物質となり、血液が緑色になります。

 と、いう理屈でゴブリンの血液は青いとしました。この物語では色んなモンスターが登場します(予定)けれども、モンスターの血の色について、黒曜犬、コボルドといった犬系は赤い血液。ゴブリン、オーガといった鬼系は青い血を持ち、赤い血のモンスターは青い血のモンスターは喰わないが、青い血系のモンスターは青い血のも赤い血のも喰うという設定にしています。

 また、丘の上に設けた落とし穴は死体処理にも使うという説明をさせていますけれども、中世ヨーロッパでも疫病が大流行したことがあります。そこで、モンスターを含めた死体処理の方法についても触れておくことで、リアリティがでるかなと思い、そうしました。尤も、落とし穴を死体処理に使うというのは後付け設定で、後で思いついたのですけども(苦笑)




5.ウオバルの石畳と図書館

 第二部ではちょこちょことウオバルの街中の描写を入れています。ウオバル領主の城へと続く緑の路の石畳の隙間に小さな小石が挟まっている、と描写していますが、これは反射板です。月明りでも路が分かるようにしているもので、緊急時に馬車が乗り入れても路が分かるようにするという配慮です。其の為、緑の路だけは馬車の乗り入れが許され、道幅も広くなっています。実際、この反射板の小石はイタリア・ポンペイの石畳に今でも残っています。

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 図書館のシーンでは貸出厳禁の本は盗難防止の為にチェーンで繋いでいるという描写がありますが、ソルボンヌ大学など、中世ヨーロッパの図書館では実際に本をチェーンで繋いでいました。このようなやり方は中世から18世紀頃までの図書館の多くで採用されていました。

 本の摩耗を避ける為、鎖は本の背ではなく、カバーや隅に付けられていました。そして、鎖を繋ぐ位置や鎖同士が絡むことを避けるため、本は背を奥にして腹を見せる形で収納されていました。当時の本の背表紙に著者や書名が記載されていなかったのも、このような収納方法が理由だとされています。本作でもこれに倣い、本の表紙には題名がついていない設定にしています。

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6.ブラック・アンタッチャブル

 ブラック・アンタッチャブルというキャラ設定は筆者にとっても中々興味深いものでした。その正体がエルテだというのは最初から決まっていましたが、それを隠すための小道具として、フード付のローブや仮面を使い、何も喋らせないことで謎の存在感を出させようと試みています。
 
 ブラック・アンタッチャブル=エルテの絵柄は、「ロードス島戦記」の灰色の魔女カーラをイメージしています。が、今は筆者の中で、もう少し可愛らしいイメージにシフトしつつありますね。
 
 ブラック・アンタッチャブルは、スティール・メイデンの魔法使いロッケンとの戦闘で色んな技を出していますけれども、技名では少し遊びました。大魔法のマジックミサイルは、半島の北のノドンミサイルから拝借して「ノード―ン」としました。当初は「テポードーン」だったのですが、露骨に過ぎるので止めましたけれども、まぁ、バレバレのネーミングですね。

 当然、迎撃する側は「SM3=スタンダード・ミサイル・ブロック」、「PAC3=パック・スリー⇒パックス・リー」となりました(笑)

 ここでパックス・リーなのですけれども、命名をしたときにパックス・ロマーナを連想したこともあり、最終的に魔法名を「リーの平安」としました。この時、はたと、じゃあリーって誰だ、と更に連想が進み、リーという人物の裏設定を作ったのですが、今のところは作中で説明する予定はありません。

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7.居合

 作中では、ソラリスが居合の技を見せるシーンがあります。ですが、設定上は居合ではありません。これについては、大分先になるかと思いますが、後の展開で説明する予定です。

 とはいえ、やはり、剣を抜くスピードについては、居合は凄いです。達人クラスになると、本当に抜刀が見えない速度で行われますからね。修練の賜物でしょうね。

 居合は「"居"ながらにして急に"合"する」、すなわち「居合わせる」技術であるとも言われています。その発祥は戦国から江戸初期の剣客であった林崎甚助重信とされています。

 林崎甚助は出羽国楯岡山林崎の生まれで、本来の姓は浅野、幼名を民治丸といったそうです。1547年、父の浅野数馬が坂一雲斎という人物に恨みをもたれ、闇討ちされ、六歳にして敵討ちをしなければならない運命に投げこまれます。

 甚助は楯岡城の武術師範であった東根刑部太夫について武術修行に励み、ある日、林崎明神に参籠し祈念した所、神より抜刀の極意を伝授された後、長年の修行の甲斐があって見事仇討ちすることが出来たと伝えられています。

 その後、甚助は諸国を廻国修行し、幾多の弟子を育てたようです。

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8.ラストバトル

 ヒロとブラック・アンタッチャブルとのラストバトルを第二部のクライマックスに持ってきました。最初はこれ程長く書く積りなかったのですけれども、第一部の異形の魔物との戦闘と違って、一対一で更に派手な動きが難しいということもあって、心理描写を多く入れ、駆け引き中心のバトルとしています。

 スティール・メイデンですら歯が立たなかった、ブラック・アンタッチャブルの鉄壁の防御バリアをどう打ち破るかについては、結構苦しみました。相手の攻撃力を強くしたとしても躱すなり、死角から攻撃するなり、それなりに色んな手を思いつきますが、鉄壁の防御力を持たれてしまった場合、どうにも攻撃が行き詰ってしまうことに後で気づきました。が、後の祭り。

 酸欠ネタを思いついたときには、偶然にもゴブリン火葬エピソードが上手い具合に伏線になってヤッタ、\(^_^)/と。(苦笑)

 火葬エピを書いたときには何と無くで書いておいたのですけれども、こんなところに繋がったとは自分でも吃驚です。

 酸欠ネタとブラック・アンタッチャブルの仮面を剥がすプロットを組んだところで、巻き戻って、ヒロがソラリスに剣術を教わるエピソードと、モルディアスに魔法を教わるエピソードを追加しました。今にして思えば、オンタイムで連載していたらと思うとぞっとします。まぁ、プロットをちゃんと組んでいればいいだけのことなのですが。




9.第二部総評

 実は、第二部はこの後の第三部と繋げて一つの章としてプロットを組んでいました。ところが予想以上にブラックアンタッチャブルとのバトルまでが長くなったので、分割しました。結果として、文字数は十五万字程度と第一部とほぼ同じ分量となりました。

 それに伴い構成を変更。現在第三部のプロットの組み直しをしています。新たな要素を入れるか、元々その後で考えていたプロットを引っ張ってくるか悩み中です。

 なるべく早く第三部を再開できるようにしたいと思います。


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