2月13日のエントリー「トランプと世界を繋ぐポジションを取った安倍総理」のコメント欄にて、通りすがり様から東芝についての見解を述べよとコメントいただきましたので、今日のエントリーはこのお返事とさせていただきます。




0.ウェスティングハウスを切り離す

3月29日、東芝は、アメリカの原子力子会社ウエスティングハウス(WH)に対して、アメリカ連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用をアメリカ連邦破産裁判所に申請したと発表しました。ウエスチングハウスの負債総額は実に98億1100万ドルに上るようです。

東芝は、債務保証の履行などで2017年3月期、1兆100億円程度の連結最終赤字に陥る見通しだと発表しました。これは国内製造業で過去最大。一昨年破産しかけたシャープの過去6年の業績で最も赤字だったのが2013年の5453億円の赤字だったことを考えると、東芝の赤字が如何に巨大であるか分かります。

なぜこのような事になったのかというと、既に色んな所で指摘されていますけれども、リーマンショック以降の構造改革の遅れ、粉飾決算の遠因ともなった過度の利益追及主義の他に、一番大きいとされていたのがウエスチングハウスの業績悪化です。

東芝は2006年に54億ドル(当時約6400億円)でウエスチングハウスを買収しました。当初、東芝はウエスチングハウスの売上高を10年で2.5倍にするという強気の見通しを立てていました。相場の倍以上とも言われた買収価格も当時の事業計画をベースに算定されていました。

ウエスチングハウスは、アメリカ南部のジョージア州で2基、サウスカロライナ州で2基の合わせて4基の原発の建設を2008年に受注しました。

原子炉の大規模構造部分はCB&Iストーン・アンド・ウェブスター(S&W)社が担当、それ以外をウェスチングハウスが担当し、それぞれ5年程度で建設する計画でした。

このプロジェクトでは、CB&Iストーン・アンド・ウェブスターが、それぞれの原子炉の大規模構造部分を別の場所で構築した後、原子炉の建屋に運んで最終的な組み立てを行うという新技術が採用され、これにより工期と費用が削減されるという触れ込みでした。

ところが、実際にやってみると、別の場所での組み立ては予想されていたより難しいことが分かり、プロジェクトは遅れ始めます。

そして更に、2011年3月の東京電力・福島第一原子力発電所の事故が追い打ちを掛けました。福島第一の事故を受け、アメリカで原発の安全基準が厳しくなったことを背景に建設のコストは更に膨らみました。特に、安全基準を満たすために設備や資材の費用が上昇。それにともない建設の工期は更に伸び、人件費も膨らんで、全体の建設コストが想定を大きく上回ったのですね。

ここで、更に問題だったのは、CB&Iストーン・アンド・ウェブスターとウエスチングハウスが発注元のアメリカの電力会社との間で「4基のうち少なくとも2基については、建設の費用があらかじめ決めた金額を超えた場合、ウエスチングハウスとCB&Iストーン・アンド・ウェブスターがその分を負担する」という契約を取り交わしていたことです。

この契約によって、建設コストが増加するに伴い、両社の採算は悪化。コストの負担を巡って両社は対立します。さらに工期が遅れる可能性が出てくる中、ウエスチングハウスは、事態収拾の為、CB&Iストーン・アンド・ウェブスターを買収しました。この時既にCB&Iストーン・アンド・ウェブスターは債務超過に陥っており、買収額は「0ドル」となりました。

しかし、いくらタダで会社を手にいれたとはいえ、それで建設コストが膨らむという問題が解決した訳ではありません。結果として東芝はこれらの問題をそのまま丸抱えしてしまったという訳です。

東芝はウエスチングハウスを破産させることで、連結決算の対象から切り離そうとしていますけれども、ウエスチングハウスには、アメリカ政府が八十三億ドル(約9500億円)の債務保証をしていることもあり、仮に破産法が適用されたとしても、外交問題に発展する可能性もあります。

また原発の発注元である電力会社から東芝に賠償を求める訴訟のリスクもあり、損失額がこれで済むとは言い切れません。

……途中ですけれども、紙幅が尽きてしまいました。続きは次回とさせていただきます。
 

コメント

 コメント一覧 (1)

    • 1. 通りすがり
    • 2017年03月31日 01:23
    • リクエストにお応え頂き、本当にありがとうございます!
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