今日はこの話題です。





11月29日、麻生財務相は参院予算委員会で、中国が主導するAIIBに関する質問に対する答弁で「急にお金を持った人が急にお金貸しになるって、どれだけノウハウがあるのと。私どもはお手並み拝見と思って見ている……求めているアジアの国々があるが、金を借りた方もちゃんと計画を立てて返済しねえと、サラ金に取り込まれちゃうみたいな話になったら元も子もありませんよ」と懸念を示しました。

鳴り物入りで大々的にデビューしたかに見えたAIIBですけれども、その実績は捗々しくありません。

決定した融資案件は今年6月現在で13件、21.75億ドル。未承認案件13件を加えても総額44.48億ドルにしか過ぎません。

これは昨年ADBが協調融資を含むADBの業務総額317億ドル(融資および無償援助が174.7億ドル、技術協力が1.69億ドル、そして協調融資額が140.6億ドル、いずれも承認額ベース)の十分の一の規模です。

AIIBは参加表明国が80ヶ国を超え、67ヶ国のADBを超えたと息巻いていましたけれども、その職員は6月時点で100人そこそこ。ADBの3000人とは比べるべくもありません。実際AIIBの融資の多くはADBに相乗りする形の協調融資ですし、100人やそこらの職員で多数の融資案件の審査や取り回しがどこまでこなせるのか疑問です。

それ以前に、早くもAIIBの台所が火の車状態です。資本金の最大のスポンサーでもある中国が人民元暴落、外貨準備金の減少に見舞われる現状ではAIIBに資金を回す余裕がありません。

AIIBは資本金1000億ドルを集めたと豪語していましたけれども、各国から集めた資本金をそのまま全額融資に回せる筈もありません。貸し倒れになったら、その時点でアウトです。通常は資本金は株や債券で運用し、融資にはその一部を充てるのが普通です。

資本金1500億のADBさえも単体の年間融資枠は最大200億ドルです。

発足間もないAIIBはその運用益もありませんから、バカスカ貸し出す余裕はありません。そこで中国がADBから8000億円程度借りて、それをAIIBに貸し出すという荒業を繰り出しているようです。

ですから、麻生財務相の「金を貸した経験のない人が急に貸すという話だ。お手並み拝見と思って見てる」という指摘も故なきものではないと思いますね。

筆者は3年前のエントリー「借金まみれの中華帝国」で、貸し倒れになった場合、融資相手国の担保を差し押さえるという口実で、軍を派遣することだって考えられる、と指摘していますけれども、麻生財務相の「AIIBはサラ金」発言もこれと同じ趣旨でしょう。

そういう懸念があるということです。

これは、筆者は麻生財務相だけの考えではありません。

12月4日、アメリカの華字メディア・多維新聞によると、パキスタン、ネパール、ミャンマーの3カ国はこのほど、中国が計画していた大規模水力発電所3カ所の総額200億ドルに及ぶ事業の中止を発表したそうです。

パキスタンはインダス川流域のディアメル・バハシャダム建設に中国が提供を申し出ていた資金140億ドルの受け入れを拒否。ネパールは25億ドル規模の水力発電事業について事業取り消しを決定。ミャンマーも「大型水力発電所には関心がない」と表明したと伝えています。

専門家は「今回中止された三つの案件は、それぞれ背景や原因が異なる。しかし、周辺の発展途上国は中国に大型インフラ事業を引き渡す代償は大きいと気付いたのだろう」と指摘。記事は「中国の『一帯一路』構想は、周辺国に長期的な植民地戦略ととらえ始められている」と伝えています。

無論、これは直接AIIBの融資案件とは違うかもしれませんけれども、中国はこのような植民地戦略を行う国であるということ。そして、その中国の息の掛かったAIIBが似た性格を持つであろうことは想像に難くありません。

やはり、麻生財務相ではないですけれども、AIIBに対しては"お手並み拝見"して距離を取ったほうが良いと思いますね。
 
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