今日はこの話題です。



5月22日、アメリカのトランプ大統領は、韓国の文大統領とホワイトハウスで米韓首脳会談を行いました。

会談に先立ち、韓国の文大統領は、記者団の質問に「最近の北朝鮮の態度のために、米朝首脳会談が開催されるかどうか心配する声もあるが、私は米朝首脳会談が予定通り開催されるものと確信している……米朝首脳会談の成功に対して、北朝鮮の完全な非核化実現に対して懐疑的な見方が米国内にあることは充分承知している……過去に失敗したからといって今回も失敗するだろうと会談前から悲観すれば、歴史の発展はありえない……しかもこの首脳会談を導く人はトランプ大統領だ」とコメントしました。

トランプ政権は、文大統領が南北融和を促進させたい思惑から、北朝鮮の非核化の意思を誇張して伝えたのではないかとの疑念を抱いていると見られていましたけれども、流石の文大統領とて、そうしたアメリカ側の自身に対する厳しい目は分かっているようです。

会談の冒頭でも、「韓半島の運命と未来が関わっていることなので、私も最善を尽くして米朝首脳会談の成功を助け、トランプ大統領といつまでも共にするだろう……トランプ大統領だからこそ、過去数十年間、誰も成し遂げることのできなかった偉業を成し遂げることができると確信している……力を通した平和というトランプ大統領のビジョンとリーダーシップのおかげで、史上初の米朝首脳会談が開かれることになり、韓半島の完全な非核化と世界平和という夢にぐっと近づくことができるようになった」と、美辞麗句を並べて一生懸命トランプ大統領を持ち上げてみせました。

米朝会談の仲介役を自認する文大統領としては、それらしく取り繕わなくてはならなかったのかもしれません。

ただ、そんな文大統領の苦心もトランプ大統領には通じませんでした。

トランプ大統領は、文大統領の目の前で「金正恩労働党委員長の非核化は真剣だと思うが、望んでいる条件が充足されなければ会談はできない……6月に米朝会談が開かれ得ない相当な可能性がある」と述べたのですね。

これについて著作家のシンシアリー氏は自身のブログで「トランプ氏の発言は、いつもどおりツイッターなどに書いたなら、「金正恩氏に言った」と見るべきです。しかし、韓国との首脳会談でわざわざ「会談しなくていい」と話し、それが即、マスコミに流れたとなると、明らかに「文在寅氏に言った」と見るべきでしょう。文氏には大きな「圧迫」になるでしょう」と指摘しています。まぁ、平たく言えば釘を刺した訳です。

会談でも、文大統領が「金正恩委員長は、板門店宣言を通して『完全な非核化』を約束したのに続き、最近は抑留米国人3人の釈放と豊渓里核実験場閉鎖などで米朝首脳会談成功のための誠意を示している……トランプ大統領の強力なリーダーシップと金正恩委員長の決断によって北朝鮮の核問題解決の糸口ができた。われわれは、なんとか整ったこのチャンスを逃してはならない」と北朝鮮が誠意を見せているからそれに応えるべきだと述べたのに対し、トランプ大統領は「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」が実現しない限り、北朝鮮への制裁圧力は緩和しないし、北朝鮮が主張する「段階的非核化」に同調しないよう念を押したとみられています。

要するに平行線だった訳です。

トランプ大統領自ら、米朝会談が行われない可能性は相当あると口にしたのですから、現時点では会談の実現が後退したことは間違いありません。

まぁ、トランプ大統領にしても絶対に米朝首脳会談をしなければならない理由もありませんしね。

一方、北朝鮮にしてみれば、シンガポールでの米朝首脳会談はリスクが大きい。

まず、会談の前提が「完全な非核化」ですから、会談に出てくる時点で、それが決定になります。トランプ大統領は非核化に応じれば体制を保障すると言っていますけれども、イラン合意を離脱してみせていることを考えると100%信じることは出来ないでしょうね。

また、シンガポールにいくこと自体にもリスクが伴います。

ワシントン・ポスト紙によると、北朝鮮関係者が、金正恩委員長が米朝首脳会談を渋っているとして、その理由は「シンガポール滞在中に軍事クーデターが起こるもしくは他の敵対勢力が正恩氏を権力の座から追放しようとするのではないか、懸念しているのだ」と述べているそうです。

筆者も「トランプモデルとイリューシン62」のエントリーで、金正恩委員長に対するクーデターの恐れもあることを述べましたけれども、やはりそうした懸念はあるようです。

やはり金正恩委員長は進退窮まってますね。

6月12日までは、「段階的非核化」を推す中朝韓と、「完全なる非核化」を要求する日米との間での神経戦が繰り広げられそうですね。

コメント

 コメント一覧 (1)

    • 1. 金 国鎮
    • 2018年05月24日 12:10
    • アメリカの力はドルの力。
      アメリカの軍事力を過大評価してはいけないが、ドルの力を過小評価してはいけない。
      中国の外貨準備高が東アジアを支えている。
      トランプがそこに目を付けた、よく分っている。
      残念ながらアメリカの製造業が復活するかはアメリカの問題であって中国の問題ではない。
      ムンジェインは弁護士出身で韓国の製造業とも韓国軍とも無縁の男だ。
      口先だけの理屈で進む話は終わったようだ。
      再三言っているのは北も南も今の権力の政治基盤が不明だよ。
      いずれ北の反体制政治勢力と韓国軍が話し合いを進めることになるだろう。
      中国とロシアとそしてトランプが、アメリカではない、歓迎する事態だ。
      朝鮮と東北三省と沿海州の協力があればアメリカは必要ない。
      中国とロシアの経済が問題。
      日清・日露の百年前に中露の協力があれば日本が朝鮮半島・満州・シベリアに軍事侵攻はできなかった。
      ここには中国・ロシア・朝鮮の民衆の合意が昔も今もある。
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