一昨日のエントリーの続きです。



6月2日、シンガポールで開催中のアジア安全保障会議で、アメリカのマティス国防長官が南シナ海で軍事拠点化を急速に進める中国を強く批判し、「必要なら断固とした対抗措置」を取るとし、「台湾と揺らぐことなく連携する」と発言したことについて、中国が反発しています。

マティス国防長官の数時間後に演壇に立った中国人民解放軍軍事科学院の何雷・副院長は「他国からの無責任な発言は受け入れられない。いかなる国でもつべこべ言うことは中国への内政干渉だ」と反論。中国の行動は「国防」のため、「他国による侵略を防ぐ目的で行われている……自国の領土であれば軍を派遣することも兵器を配備することも可能だ」と述べました。

公海上を埋め立てた人工島を要塞化して、国防の為だ、内政干渉だ、というのがまかり通るのであれば、どの国も埋め立てては自国領だと主張し放題です。

正に言ったもの勝ち、やったもの勝ちを地でいっていますけれども、これが現実の世界です。これを一定の秩序の下に治めるのが「ルール」であり、それを逸脱しようとするものに対する「強制力」です。

アメリカは中国の南シナ海の海洋支配に懸念を示していますけれども、中東も北朝鮮も抱えた上に、中国とも軍事衝突をするのは避けたいところでしょう。やるならば、経済的圧力を掛けてジワジワと体力を削っていくのが得策でしょうね。

中国は国内総生産(GDP)に占める不動産投資額の比率が異常に高く、2016年当時で23.7%にも及んでいます。当然、銀行融資も不動産に充てられ、2106年の新規融資の総額12.65兆元(約200兆円)のうち、個人向け不動産ローンへの貸し出しは5.68兆元で全体の45%と圧倒的です。

当然価格は高騰し、段々投資するだけの物件も無くなってきます。そこで余った金は今度は、海外企業や海外資産の買収に流れていったのですね。

しかし、そこでも中国企業が競り合う形で買収を繰り広げた結果、海外の投資物件の価格をも釣り上げてしまったのですね。

こうした動きの中、昨年夏、中国の金融監督当局は外貨不足への対応と金融リスクの拡大懸念から、海外投資の規制を一気に強化し、投資拡大をしてきた企業に対しての締め付けを強化しました。

2017年8月、国家発展改革委員会は、最近の対外直接投資の状況について、一部の企業による「無謀な経営判断による海外事業での損失発生」、「非実体経済分野(不動産など)への過度な投資による海外への資本流出と国内金融への影響」、「進出先の環境保護や省エネ、安全基準に反した企業活動によるトラブルの発生等」を指摘。

そのうえで、対外投資プロジェクトを奨励分野と制限・禁止分野に分け、後者については商務部などと連名で「海外投資に関する指導意見」を公表しました。

その効果は覿面で、2017年に中国企業が海外で行った金融分野を除く直接投資額は、総額1200億8000万ドル(約13兆円)と、前年を29.4%下回りました。

要するに、海外企業を高値で買う中国企業が無くなってしまった訳です。

すると、これまで高値で買収した企業や高額投資案件の多くが実は不良債権なのではないかとの思惑を呼んで、中国企業財務状況に疑念が生まれているようです。

こうした状況に陥っている中国企業は買収資産売却をしようとしていますけれども、買収金額以上での売却など望むべくもなく、増々窮地に陥るものと見られています。

先日、アメリカが、中国の知的財産の侵害に対する制裁措置として、輸入品に25%の関税を課す最終的な品目のリストを来月までに公表し発動する方針を明らかにしていますけれども、今の中国にとっては絶対に回避したい案件でしょう。

南シナ海と貿易を巡って米中の対立が今後増々激化していくことは避けられなさそうですね。
 

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